厚生労働省は2026年10月9日、「令和8年版 過労死等防止対策白書」を公表しました。

過労死等の防止というと、長時間労働や残業時間の管理を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、今回の白書では、精神障害に関する労災請求の増加と、職場の対人関係にも焦点が当てられています。

11月には「過労死等防止啓発月間」も始まります。中小企業の経営者・管理職が今、確認しておきたい点を整理します。

白書が示した「長時間労働」以外の課題

今回の白書は、労災請求の増加要因や重点業種の状況を分析しています。精神障害に係る労災請求件数は増加しており、出来事の類型別に見た労災の決定件数では、「対人関係」の伸びが大きく、その中でも「上司とのトラブル」の伸びが目立つとしています。

また、労働局に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」「パワーハラスメント」に関する相談も増えています。

ただし、白書は「上司とのトラブルが労災請求増加の原因だ」と断定しているわけではありません。因果関係については、なお分析の余地があると明記しています。なお、ここでいう「決定件数」は、支給決定と不支給決定の合計であり、労災認定件数そのものではありません。

経営者として大切なのは、残業時間の数字だけでなく、日常の指示の出し方や相談しやすさにも目を向けることです。

中小企業で見直したい3つのポイント

1.残業時間は「月末」ではなく「月の途中」で確認する

勤怠の集計を給与計算時に初めて確認するのでは、長時間労働への対応が遅れます。月の途中で残業時間や休日出勤の状況を把握し、業務の偏りがある場合は人員配置や納期を見直しましょう。

あわせて、打刻記録と実際の勤務状況に差がないか、持ち帰り仕事や始業前の準備作業が見落とされていないかも確認が必要です。

2.「注意・指導」と「人格を傷つける言動」を区別する

業務上の指導そのものが問題なのではありません。重要なのは、指導の必要性・相当性や伝え方です。

例えば、ミスを正す場面でも、人格を否定する発言、周囲の前で繰り返し叱責する行為、遂行不可能な業務の押し付けなどは、職場環境を悪化させるおそれがあります。

管理職には「何が問題で、次にどう改善してほしいか」を具体的に伝える指導を徹底し、相談を受けた際の対応手順も共有しておきましょう。

3.相談窓口を「置くだけ」で終わらせない

職場のパワーハラスメント防止措置として、相談体制の整備などはすべての事業主に義務付けられています。また、2026年10月1日からはカスタマーハラスメントおよび求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置も義務化されています。
相談窓口を設けても、相談した内容が上司にそのまま伝わる、相談後に不利益を受けるといった不安があれば、従業員は利用しにくくなります。

相談先、秘密の取扱い、事実確認の流れ、相談者への不利益取扱いをしない方針を、従業員に分かる形で周知しましょう。小規模な会社で社内の担当者を置きにくい場合は、外部専門家の活用も選択肢です。

11月は「過労死等防止啓発月間」

厚生労働省は、2026年11月を「過労死等防止啓発月間」として、全国でシンポジウムなどを実施します。

あわせて「過重労働解消キャンペーン」では、長時間労働が行われていると考えられる事業場への重点的な監督指導が行われます。また、11月1日~7日には労働局・労働基準監督署で過重労働に関する相談を受け付け、7日(土)には特別労働相談が実施されます。

「11月だけ対応すればよい」という話ではありません。キャンペーンをきっかけに、勤怠記録、36協定、残業代の計算、健康確保措置、相談体制を日常的に点検できる状態にすることが大切です。

経営者が今週できる確認

  • 直近3か月の勤怠を見て、残業が集中している人や部署がないか確認する。
  • 実際の勤務時間と、タイムカード・勤怠システムの記録にずれがないか確認する。
  • 管理職の指導方法について、部下が安心して相談できる仕組みがあるか点検する。
  • ハラスメント相談窓口と、相談後の対応手順を従業員に再周知する。
  • 過重労働や体調不良の兆候がある人への声かけ・相談対応を、早めに行う。

過重労働の防止は、「時間の管理」と「職場の人間関係への配慮」を両輪で進めることが重要です。残業時間が少なくても、強い心理的負担を抱えている従業員がいないか、職場全体を見直してみてください。

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労働時間管理・職場環境の見直しはご相談ください

いのしし社会保険労務士事務所では、勤怠管理の点検、36協定の整備、管理職の指導方法やハラスメント相談体制の見直しなど、事業所の実態に応じた労務管理を支援しています。

問題が起きてからではなく、従業員が安心して働ける仕組みを整える段階からご相談ください。

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