
どんな話?
東京書院は従業員9人を雇用する出版社。そこで働くAさんらは、待遇改善などを求めて、会長に労働組合結成を通告しました。
ところがその場で会長は「会社はもうこれ以上やっていけない!」と、口頭で解雇を通告。Aさんらの組合は会長に団体交渉を申し入れましたが、会長は応じませんでした。会長は会社の看板を取り外し、休業の張り紙をした上、解散を決議して解散登記を行い、会長自身が清算人となって清算手続きを始めました。
Aさんらは会長の行為が不当労働行為(労働組合に不当に不利益を与える行為)に当たるとして、東京都地方労働委員会に救済を申し立てました。
争点
会長が行った「会社の解散」が労働組合をつぶすことを目的としたものかどうかが争点となりました。都地労委は会社の経営状態は、組合結成前までは通常のものであり、突如解雇や解散を言い出す必然性が認められないとして、会長の行為が組合をつぶすことが目的と判断。会長に、Aさんらを職場に復帰させるよう救済命令を出しました。
それに不服な会長側は中央労働委員会に再審査の申し立てを行いましたが、それも棄却されたため、「会社を解散したのは経営不振が原因であり、もはや会社に財産もない。中労委の命令に従うことは不可能だ」として裁判を起こすに至りました。
判決は?
第一審でも、会社が行った解雇や会社解散は、経営上の必然性が乏しく、組合結成を阻止するために、経営不振を言い訳にしたものに過ぎないと断じました。
さらに会社側が経営不振の証拠や、清算中とは言いながら、特に清算についての証拠も出していないので、財産がなくなったという主張は認められない、として、会社の不当労働行為を全面的に認め、Aさんらの会社復帰などを命令しました。第二審、最高裁でも第一審の判決を追って認めたものとなり、会社側の全面敗訴となりました。
いのしし社労士の解説
東京書院の会長さんの行為が労働組合つぶしを目的とした「不当労働行為」であることは、誰の目にも明らかですが、問題は、「さあ裁判に勝ちました。それで?」と戻る会社が存在しない場合、Aさんらを結果として救うことが出来るのかということです。解散が偽装か本当かで、結論は変わってくると思いますが、どちらにせよ、この判決は世間のほとんどの方には関係ないかな?と思います。確かに労働組合は経営者にとっては目の上のたんこぶではありますが、うまく付き合うことで、経営改善に役立つ場合も少なからずあります。
不当労働行為を行うことで、裁判リスクや損害賠償リスクを背負うより、出来てしまったものを受け入れて、それをうまく活用することで、活路を見出した方が無難かと思われます。でも、そんなに上手に従業員の活用を考える経営者の会社に、労働組合が結成されるとも思いませんけど・・・。
関係条文
憲法第22条第1項(集会・結社・表現の自由)、同第25条第1項(生存権)、同第28条(労働基本権)、労働組合法第7条第1項、同第3項(不当労働行為)、会社法第471条(解散の事由)
学説など
偽装解散の場合は、不当労働行為法制の適用範囲が議論されるのに対し、真正解散の場合は、不当労働行為法制の適用そのものが議論される。組合壊滅目的解散と解雇について肯定的な学説と否定的な学説が対立している。肯定的な意見は、職業選択の自由が優先し、否定説は生存権、労働基本権を優先する。
出典
「別冊ジュリスト労働判例百選第7版」





