どんな話?

丸島水門は、当時、資本金1,400万円程度の水門の製作・請負の会社です。そこで働くAさんたちは、昭和33年8月に労働組合をつくり、以後団体交渉を2回行い、月額3,000円の賃上げを実現してきました。さらに昭和34年5月、団体交渉を行い、月3,000円の賃上げを要求しましたが、会社側は「経営上これ以上の金額は難しい。他の会社もそこまでの給料ではない」としてこれを拒否。800円程度の賃上げを回答しました。3回ほど交渉しましたが、折り合いが着かず、Aさんの組合はストライキ宣言を行い、実力行使に出ました。

その内容は暴力行為も伴うかなり激しいもので、
(1)会社を中傷するビラを事務所内の壁や窓に張る。
(2)事務所内を喚声を上げてデモ行進する。
(3)拡声器を使って会社を誹謗する内容の放送をする。
(4)出張拒否をする。
などです。こうした行動は、徐々に他の部署にも波及しました。たとえば製缶工場などでサボタージュ(サボり行為)が始まったり、工務部や倉庫係の正副班長である組合員8名中7名が一斉に休暇をとったりしました。

そうした結果、会社の作業能率が著しく下がり、正常に業務を行うことが難しくなりました。会社側は、このままでは会社経営ができなくなると考え、同年6月2日にロックアウト(作業所閉鎖)を行い、Aさんら組合員の就労を拒否し、その分の賃金を支払いませんでした。

Aさんらは、ロックアウトによる賃金の未払いは不当だとして、裁判を起こしました。

争点

会社側が組合の争議行為に対して取った「ロックアウト(事業所閉鎖)」という対抗手段。

これがはたして認められるのか、認められるとしたらどのような場合なのかが争点です。第一審ではAさんらが勝訴、第二審では会社側が逆転勝訴しました。

判決は?

組合側のストライキ権が、刑法の罰則などから解放されているのは、力関係において優位な会社側と対等に交渉できるようにするためです。しかし組合のストライキがあまりにも激しくなり、労使の力関係が逆転するような場合には、会社側の対抗手段としてロックアウトは認められます。

具体的には、個別の労働争議における
(1)労使間の交渉態度
(2)交渉経過
(3)組合側のストライキの内容
(4)それによって会社が受ける打撃の程度
などから判断されます。

正当なロックアウトであれば、賃金の支払いはしなくてもよくなります。最高裁はこうした基準から、今回、会社が行ったロックアウトは、こうした条件を満たしていると判断し、Aさんらの上告を棄却、会社側の勝訴が確定しました。

いのしし社労士の解説

ロックアウトとは、会社側が労働者の争議行為の対抗手段として、従業員を強制的に会社から締め出し、いわゆる「ノーワークノーペイ」の状況を人為的に作り出して、給料を支払わない手法です。本判例は、会社側が従業員を強制的に締め出すのに、なんで給料を払わないんだ!という疑問に答える例として、とても重要視されています。

実際には、ロックアウトが正当であると認められるための要件は非常に厳しく、ロックアウトを交渉の武器として用いることは原則認められません。あくまで会社を守るための手段としてしか使えないし、ある意味「伝家の宝刀」でもありますので、これを使ってしまえば、労使の争議行為がエスカレートしてしまうことは避けられません。争議行為が発生するような場合は、いわゆる労使双方がかなり感情的になっているケースがほとんどです。

人事労務の担当者としては、判例のような状況に陥らないよう、日常の労使関係について、もう一度見直してみてはいかがでしょうか。

関係条文

憲法第28条(労働者の団結権・団体交渉権その他団体行動権)、民法第536条第2項(債務者の危険負担等) 、労働組合法第7条(不当労働行為)、労働関係調整法第7条(争議行為の定義)、国営企業及び特定独立行政法人の労働関係に関する法律第17条第2項(争議行為の禁止)、地方公営企業等の労働関係に関する法律第11条第2項(争議行為の禁止)

学説など

ロックアウトの意義及び法的位置づけについて、(1)労働法的考察方法 使用者の正当な争議行為として承認された場合、賃金支払い義務を負わない、(2)市民法的考察方法 使用者がロックアウトにより労働者の就労を拒否した場合、賃金支払い義務の有無は、使用者の責めに帰すべき事由があったか否かによって決まる、の2つがあり、最高裁は(2)を採用した。その後の主な判例で(事件名のみ)、山口放送事件、日本原子力研究所事件、ノースウエスト航空事件、第一小型ハイヤー事件がある。

出典

 「別冊ジュリスト労働判例百選第7版」