
どんな話?
昭和33年10月に国会に提出された警察官職務執行法改正案に反対した、「全農林」という労働組合がありました。全農林は農林省の公務員で組織されています。同年11月5日、その反対運動のためストライキを断行。組合員、約2,500人にストライキに参加するようにあおりました。
この行為が国家公務員法に違反するとして、5人が起訴されました。
争点
そもそも公務員であっても労働者であり、基本的人権である労働基本権は保障されています。したがって、それを制約するには、厳しい条件が付されるべきだというのが、それまでの最高裁の判例でした。
第一審は無罪、第二審は逆転有罪となりました。
判決は?
あえてむちゃくちゃ簡単に言えば、公務員は民間人に比べたら身分が特殊で、なおかつ、その仕事は民間企業に比べて公共性があるので、労働基本権が制約されてもやむを得ない、というものです。
「人事院」という、内閣から独立した機関が給料の水準を勧告する仕組みがあったり、身分が保障(むやみにクビにならない)されていたりと、労働基本権を制限する代わりに、きめこまやかな保障(代償措置)を受けています。ですから、公務員の権利を制限する国家公務員法の規定は、憲法に違反しているとはいえません。
なお、岸・天野両裁判官は、補足意見で「この代償措置が意味のないものになる時が来たら、公務員が代償措置を戻せ!と言って、ストライキをしても許される」としました。
いのしし社労士の解説
高校生のころ、労働三権を習った時に、同時に公務員のストライキが禁止されていると知り、「憲法に矛盾してるのにいいとかいな?」と単純に思ったものです。しかし同じ憲法の中で、公務員の位置付けは「全体の奉仕者」だとも習ったし、「法律、予算は国会で決める」とも習いました。ですから憲法の中で、この部分については、もしかしたら矛盾があるのかも知れないですね。
ちなみに欧米先進諸国では、消防職員を含めた公務員にストライキを含めた労働基本権を与えることは「当たり前」であり、それを認めない日本の姿勢は「発展途上国並みだ」と批判しています。またILO(国際労働機関)は、批准した条約に違反しているとして、日本に法改正を勧告しているのみならず、日本には法改正をする法制技術がないとして、技術的援助をしてもよいとまで言われてしまっています。ちょっと恥ずかしいかな?
関係条文
憲法第13条(個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重)、同第15条(公務員の選定罷免権、公務員の性質、普通選挙と秘密投票の保障)、同第18条(奴隷的拘束及び苦役からの自由)、同第28条(労働者の団結権・団体交渉権その他団体行動権)、同第41条(国会の地位、立法権)、同第73条4号(内閣の事務)「法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。 」、同第83条(財政処理の権限)、国家公務員法第63条第1項(給与準則による給与の支給)、同第98条第2項(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)、同第110条第1項第17号(罰則)
学説など
公務員の基本的人権保障の観点から「制約の必要最小限度論」、憲法第73条第4項(内閣の事務)を「明治憲法下における官吏関係の反省論」、労使間の自由な交渉を全面的不可能にするような立法政策を疑問視する論、政府に一定の人事管理権限を付与している以上、財政民主主義による制約を疑問視する論、公務の担い手多様化により、民間との特殊性をことさらに強調することは時代遅れだとする論など、この判例に批判的な学説は多い。
出典
「別冊ジュリスト労働判例百選第7版」





