リファラル採用とは?

リファラル採用とは、求人するときに社員から知人を推薦してもらい、上手く採用にこぎつけたときに推薦した社員に報奨金を支給する制度です。

会社は信頼できる社員を安いコストで雇用でき、紹介した社員もお金を貰えて、どちらもウインウインと思いますが、実は法律上クリアしないといけないことがあります。

リファラル採用の留意点は?

労働者を募集するときは職業安定法という法律がかかわってきます。同法30条には、ざっくり言うと雇用労働者以外の人に有償で募集を頼む場合は厚生労働大臣許可が必要で、無償であっても届け出が必要と書いてあります。

罰則もありまして、無許可で有料職業紹介を行ったときは、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。そしてリファラル採用の場合は、雇用労働者に募集を頼むので、この条文には違反しないと思われます。

もう一つ留意しないといけない事項があります。職業安定法第40条です。法律の条文をそのまま記載しますと、

 「労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。」

と書いてあります。

要するに会社は自社労働者に労働者募集をさせる場合、賃金、給料等以外で報酬を与えてはダメですよ、ということです。なので、報奨金については、賃金、給料として渡さないと職業安定法違反になりかねない、と言うことになります。この条文に違反したときの罰則は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金です。

なお、この法律の主旨ですが、誰かが、労働者と会社の間に立って人材を紹介する場合、会社がその誰かに報酬を渡すと、労働者側から見ると、どうしてもピンハネと見えてしまうので、それを禁止する意味合いがあります。賃金、給料であれば、労働者募集が業務の一環とみなされ、ピンハネにはならないので、例外的に認められています。

職業安定法違反にならないようにする対策とは?

で、職業安定法違反にならないようにする対策なのですが、

報奨金を出さない・・・そもそも制度化する意味がない。

お金でなく、何かモノ的なものにする・・・これも「報酬」とみなされ職業安定法上、違法性があります。

社長のポケットマネーとして帳簿に載らないお金で出す・・・裏金要素が強くなりますし、バレれば職業安定法第30条の「有料職業紹介事業」を無許可で行なったことになりかねず、最悪、推薦した労働者が1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

昇給する・・・労働者募集と昇給の間に因果関係を見つけづらいので、方法の一つではありますが、給料としてずっと影響するので、別の問題が出てきそうです。金額によっては社会保険の被扶養者130万円の壁にも直接、影響しますね。

ということで、解決策は、社員採用を業務と位置づけ、奨励金を賃金、給与として支給するため、就業規則や賃金規程、あるいは別途リファラル採用規程を制定する方法が一般的です。

実務的には社会保険上、賞与とみなされることが想定されますので、通常の賞与支給と併せて支給し、別途単独で出さない方が無難です。別途単独だと、その回数によっては次年度の社会保険の保険料(算定基礎届)に影響が出る可能性があります。

就業規則あるいは賃金規程の条文ですが、そんなに難しくありません。以下は条文例です。

  • 適切な人材を会社に紹介することその他採用活動を、社員の業務とし、当該業務を行った社員等に対し、社員紹介手当を支給する
  • 前項の業務を行った社員に対し、社員紹介手当を支給する。その額は以下の通りとする。(そしてあまり高額な金額設定をしないようにする)

まとめ

リファラル採用には合う会社と合わない会社があると考えます。例えば、毎年新規募集を定期的に行っている会社では、リファラル採用では計画的な人材確保が難しいでしょう。さらに知り合いが同じ職場で働くので、その人間関係が悪化したときには、会社のことを悪く言われる可能性も出てきます。

など、デメリットも踏まえつつ、メリットを生かした人材確保にリファラル採用を取り入れることを検討してみてはいかがでしょうか。