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従業員兼務取締役の退職金~前田製菓事件~
最高裁昭和56年5月11日第二小法廷判決。
【どんな話?】
Aさんは前田製菓の社員。工場長だった昭和37年9月、工場長のまま代表権のない取締役に就任しました。ところが、社内トラブルの結果、Aさんは昭和45年11月に慰留や引継ぎ指示にも従わず退職。
当時、従業員の退職慰労金規定では、退職金算定にあたり、
(1)特定の者のみに支払われる部分は算入しない、
(2)退職にあたり、会社の指示する日までの服務を継続しない場合は支給額を半減する、
旨の規定がありました。
Aさんは、会社に対し、従業員または取締役としての退職慰労金の支払を求めて裁判を起こしました。
【争点】
さきほど、退職慰労金規定の話は出ましたが、取締役の退職慰労金については、当時の前田製菓には、(旧)商法上必要な、報酬に関しての定款も株主総会の決議も存在しませんでした。
したがって、工場長という労働者としての退職金と、取締役という使用者としての退職金を分けて考える必要があるかどうかが大きな争点でした。
第一審、第二審とも工場長部分の退職金は認めましたが、取締役部分の退職金は(旧)商法上の規定を適用し、支給を認めませんでした。
Aさんは、この退職金は商法上の報酬には当たらない、また同社のような同族会社には商法上の適用がないと主張して、最高裁に上告しました。
【判決は?】
最高裁は第二審の判断を維持し、Aさんの上告を棄却しました。
第二審では、退職金の額を取締役就任前の給与額(七万九千円)から、役付手当(二万五千円)を引いた額を基本額にし、さらに退職慰労金規定どおり、算出した額を半減した額で認定しています。
【いのしし社労士@霞雲の介の解説】
旧商法第269条では、役員報酬は定款又は株主総会の議決によって金額を定めることになっていました。
したがって、Aさんの労働者部分の退職金は、規定に基づいて請求が認められましたが、取締役部分の退職金は、定款も総会議決もなかったために否認されたわけです。
逆に言えば、取締役とはいえ労働者性のある者については、その部分の報酬や退職金は「賃金」としての支払義務が生じるということになります。
中小企業や同族会社を多くお客様にいただく社会保険労務士としては、当然、こうした事態も多く発生しうるわけでして、取締役就任時に、いったん退職金を支払っておくとか、取締役と従業員との境目や賃金・報酬を明確に区分けしておくなどの対応が必要かと思います。
また当然といえば当然ですが、新会社法についても、知識として把握しておけば、こうしたトラブルについての対応策も浮かびやすいことでしょう。
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